劉伯温の系統の符呪体験記

 今回もまた別の師匠より伝を受けた。町よりバスに乗り八時間かけてやっとその田舎町へと着いた。朝の十時半にその町行きのバスが出ると師匠より聞いていたが、なにしろ初めて行く土地であるので早くバス乗り場に着いた。すると十時発のバスであった。三十分位バスターミナルで待ちやっとバスに乗った。夕方の六時過ぎ頃に着いたが、町中は渋滞であった。そしてその先生が迎えに来た。先生の家の近くのホテルを紹介してもらい、次の日の朝に先生の自宅にと行き、そこで伝法を受けた。
 これは劉伯温の系統であると申し、劉伯温の符呪咒は受けたが、占いの方の奇門遁甲は習えなかったと申す。昔の軍師とかは兵法だけではなく、こういった法術とかも心得ていた。やはり最初は五營等の軍隊を使う術であり、五營の旗を置くのかと聞くといらないと申す。ただ呪文だけで子の時に兵を呼ぶ呪を一時間唱え続け四十九日間行なう。そして今度はまた兵を集めこれを使う呪文の修練であり、これらも一時間唱え続ける。この門派は呪文が主体であり、符は極めて少ない。

  次の日は先生の家で食事をし、そして外に出ると車が待っていてそれに乗り、市場に行き鶏一匹を選び買い、そして儀式に使う多くの紙銭類を線香屋にて買ったりそこには私が捜していた金紙・銀紙や黄紙があったので大量に買った。少し車で走ってから先生は車をおり石製のお椀七個を買ってきた。これも儀式に使う物であり、おまえに渡す物であると申す。また少し走ってから車の調子が悪いので修理工場にと入った。聞くとこの人は先生の親戚であり、二三日前よりここに帰ってきていると申す。この車も姉さんの物だと申す。
 それより車は町を離れて行くのでどこに行くのかと思った。前より廟やらであんたはそこで寝なければいけないとは聞いてはいたが、具体的には知らされてはいなかった。そして山道にと入り、車を降りて鶏とお供え物や紙銭等を二人で携えて登って行った。聞くとそこは土葬の墓場であり、そこで先生は儀式を行なった。ロウソク二本を地面にさしてそして線香を供え、赤い紙をしいてお椀七個を置き、その赤い紙に私は寝た。
 儀式が終わってから先生は私に両手で鶏の首を押さえ捻って引くちぎれと申すが、私はやった事がないのでなかなか出来ないでいると先生も手をかしてくれて引きちぎれた。そしてうーんと遠くに投げろと申す。先生や私の腕も鶏の必死の抵抗の蹴りに会いケガをしたが、しかし先生が申すにはこのケガが多い程鶏の手助けがあるとの事であった。

 次の日に先生の所に行くと何か見たのかと聞くので、私は霊眼でそのくさむらに多くの猛々しい蛇の群れを見、その中でも一匹の蛇が歯を向きだしにして噛もうと向かって来たのでギョッとしたりその事を申すと彼は私が夢で見たのだと思い、あんたは特に道縁があると申す。噛まれたのかと聞いたが、おっかなくて見るのはそこで止めた。その蛇は実は龍であり、噛かまれるとその龍はその人の使役に甘んじると申す。
 先生の弟子でその人が電話で申すには、体から五匹の龍が出てきてそのまま北西の方位にとび去ったので、これはどう言う意味かと聞くので、注意が必要できっと何かあると言ったそうで、そして数日して四川の大地震が起こったとの事であった。その日の夜の夢に先生が出てきてまたそれより年配の人が出てきて先生を指揮していて、私によく修行に励むようにとお言葉を賜った。その事を先生に話すとそれは師祖であると申し、あんたはよくよくこの道に縁があると言われた。

 先生は三日目の夜中に戻るので一緒に行こうと申す。何しろ金紙・銀紙が一箱にぎっしりとつまって重くまた黄紙もあり、一人で運ぶのには大変なのでそうする事にした。夜の十一時発位の長距離バスで乗客も当然少なく、切符には座席番号が書いてはあるが好きな所に座った。そのバスの中で私は霊眼で、多くの蛇たちに噛まれたのを見た。噛まれると聞いていたので傷ついて出血するのかと思ったが、実はポーンと触れられただけですぐに自分の法力が強まった、高まった感じがした。
 最後に五色の蛇が出てきて私の背と同じ高さになり、そして例の如く噛かまれた。その蛇は私に話しかけてきて、そして人間の姿となりそして消え失せた。この事も先生に申すと彼は私が夢に見たのだと思ったが、実は私が霊眼で見たものであった。ある人などは全然何もなかった人もいたとの事であった。

 二日目に先生の所に行ったおりに、先生は私にあなたは雪のある山に行っただろうと言った。私は別に行ったおぼえはなかったが、それならばこの九月の夏に雪のある山と言えば、それは富士山であろうとは言った。この帰りのバスの中でまた私は使魂して空中よりはるか下を見下ろすと、山の上をこの先生が出神・使魂して空中飛行しているのが見えた。その高度も私の弟子の様に高くはなく、またそのスピードも遅かった。この場合は一人で飛んでいた。先生は三十年修行したとは言っていた。
 私の弟子の場合は霊の力で飛んでいたわけであり、これも私がはるか上空より下を見下ろすと、二人で飛んでいるのが見え、その飛ぶスピードも遅くまたその高さも低かった。本人は自分の力で飛んでいると勘違いしていた。
 霊やオーラが見えたり、相手の事が手に取るように分かると言ったりするテレビにも出てくる霊能者にはすべて霊が憑いていて、その人に幻の映像を見せているのが実情なのである。出神できると言う人やこの様な霊憑者であっても、川や海の中にはなかなか入れないものだ。

 また私はこの先生に魚を集めて捕らえる術を習った。それは呪文を唱えるだけであり、符は使わない。最初は家やホテルなどの池にてこれを行なえば、魚が自然と集まってきて、そして裏返しとなる。腹を見せるのであり、腹を見せないと魚は捕まらないだろう。そして次は野原、山などの自然の池にて行ない、そして今度は川で行ない、最後は魚のいそうな所の海でこれを行う。魚がいない所でこれをやっても魚は集まってはこないのだ。これはアウトドアなどで山に入り、そして川で魚をとるのに釣具など何時間も無駄な時間もかけなくてもいいので、こう言う時には便利であろう。
 先生が申すには最初向こうでも有名なその人に符咒を習ってはいたが、しかしこの術はその師がこれを教える前に亡くなってしまい、結局私にこれを習いホテルの池にてこれを行なった所、本当に魚が集まってきたとの事であった。魚が裏返しになったかと聞くと、それを見ずにすぐ立ち去ったので分からないとの事であった。