サバ巫術

 このサバ降頭巫術はサバにひそかに伝わる古来の巫術であり、マレー巫術とは異なり、更に多くのちがう所がある物です。マレーシアは西マレーシアと東マレーシアとに分かれ、タイとシンガポールとの中にあるのが普通我々が思うマレーシア、即ち西マレーシアであり、ポルネオ島(カリマン島とも申す)の上部がマレーシアであり、これを東マレーシアと言うのであり、この下の所がインドネシア領であります。この東マレーシアはサラワク州とサバ州とに分かれ、広大な土地・ジャングルにさまざまな民族・原住民が住んでいるのであります。私の知っているマレーシアの知人でも、東マレーシアへは一回も行った事がないと言う人が多く、その訳は不便とか、言葉がわからないとか、食事が合わないからだと申して居られた。

 本派の秘術類は東南アジアにて始めて公開紹介する物であり、現地でも紹介された事がない。
 本降頭巫術は奇異なる古老の巫法であり、この法門ではすべてサル神を祭って施法し猿神を駆使して事を行なわせるのであり、駆邪・養鬼・夫妻不和・家出・愛情法等はすべてこれ本巫術の精華であります。
 本巫術は密室の巫術の法場、即ち壇にて施法するのであり、法場を設けて最も重要なるは満月の夜、サル二匹を殺して施法してこのサルを使うのであり、この祭法は秘伝中の秘伝であります。

 本術は猿神を主とするが、本派には更に稀有の天猿神と称するのがあり、即ちこれは鎮術の宝であり、本派に伝わっているのはただ三体があるのみであり、即ち古老の石像であり、古代より伝わってきている。本派の教主であるルウ・ムウ・ピーン・サア・タアが夢の中でサル神の指示を夢見て、三つの法宝・即ち宝物をなんじに与えるとのお告げであり、夢がさめてから、即ち海に出て漁に出て魚を捕らえるのに綱を入れた時に、真に三つの古老の石像を得られたのであり、此の物は千年もの歴史がある真に得難い法物であるのです。この天猿神の石像は三体があるのみであり、一体はわが師である略称アリ師が所持し、もう一体は師の弟弟子で、最後の一体は師より私が授かったものであり、この天猿神は法力は奇異にして、不可思議なる妙がありと申す。この石像は高さ約十四センチ五ミリであります。

 以前に台湾にて道ばたにてオリに入れられて売られているサルを見かけた事があったので、今回台湾にて知り合いの人にこの事を申すと、今は台湾でも野生動物禁止法とか出来て、サルを捕ったり売ったりするのは厳禁との事で、罰金もあり、何年もオリの中に入れられるとの事であり、日本でも野生の動物は勝手に捕まえて殺してはいけない法律があるのです。今回動物虐待防止法などが出来て、飼っている動物でも殺してはいけないのであります。

巫師自修法

 巫法を修せんとすれば、必ず本身の法力を一定の法力にまで修練してこそ、その法力で以て人のために施法し駆邪出来 るのである。カラのヤシに水を入れて、法師は両手でこれを取り、甘文煙にくすぶらせながら念呪する事二十一回にし て、これを服用するのであり、百日間行なへば円満。

猿神感合法

 甘文煙をともして両手でサルの頭の骨を持ち、くすぶらせながら念呪する事二十一遍にして、持ったままで静座する事五分聞にして、猿神の頭が少し発熱するようになる。この時に通神符を書くのであり、このように祭練する事二十一日にして、猿神と感応通神するようになる。

通神法

 カラのヤシに水を入れ、夜中の十二時に甘文煙を壇上にてともし、法師は通霊石一個を手に持って地面を叩く事三回、そしてヤシを両手に持って甘文煙にくすぶらせながら念呪する事二十一回、法師はこの法水をとって眉聞及び胸に点じてからこの法水を飲む事二十一日聞にして猿神と通ずるようになる。

修法場護法

 まず二つの猿の頭の骨二個を準備する。この二個を護法として修練すれば、よく法師が人と闘法をした時に、二個の護法となりてその力を発揮し、猿神が法師の安全を保護し、降頭術の侵害を受けず、又二個の護法の猿神を駆使して招財・招客・駆邪・人の魂魄を捕まえる等の降頭術を使えるのであり、法師にとってはなぐてはならない一門の降法なのであります。

請神法

 施法の時には本法の請神をして、そしてその他の各種の法を修練すれば、更に奇効あり。駆邪法。定神呪。猿神招客法。猿神和合法。護身符。追人来法―人然失綜した時に此の法を施せば、失綜者或いは逃げた者ももどるようになる。迷魂法―人の魂を迷わして施法者に従わせる。招生意法―商売がうまくゆかない時に、此の法を施せば良く招客興旺と成る。定心法―邪降に当てられたり、妖鬼にやられて精神が定まらなければ、此の法を施す。聡明法―一枚の符を書いて子供に帯びさすれば、良く聡明と成る。

一、養鬼法―小さな木の人形を小さなガラス容器の中に入巫油を八分目入れ、黒夜墓場に行きて此の法を修するのであり、さすれば鬼霊を駆使し事を行わせるのである。
二、御鬼法―養鬼法を行なって鬼霊を収養して、この御鬼法を行なってこそ、鬼魂を駆使し使う事が出来るのである。
三、馴鬼法―鬼魂の事を行なう力が弱い時に此の法を行なう。照水碗―失綜者や失せ物等の知りたい事には、これを行なへばそれが見えてくるのであります。駆邪退病法。愛情法。招客法。毒心術―これは人を毒咒にかけて邪病にあてるのであり、仇人は術にあたりて病で倒れるようになる。猿手退邪法―これは黒いサルの手一対を祭練して退邪法に使うのである。猿神こう魂法―人の精神を不安にさせ、仇者の魂魄が不安と成る術で、黒サルの手一対を使う。賭咒術―粒の魔石を修練するのであり、ギャンプルをする時にこの石を体につけて賭博情場に行けば、必ず勝つ。請鬼作怪法―此の法を施せば仇人の家で幽霊が出るようになる。闘鶏法。迷心鬼―これは銀或いはスズで小さな人形を作り、 足の底には穴を開けておき、意外に亡くなった男女の血及び毛髪を少し取りて、これを人形の足の中に入れて修法をするのであります。辟邪咒法。樹葉旺生意法。樹葉辟邪降法。樹葉辟意外法等。

羊神祭練法

 羊神はこれ本派の鎮壇の宝であり、必ず羊神の石像を入手しなければならないが、羊神の石像は求めがたく、ただ老法師の伝え来った物だけがあるのみである。羊神の石像は羊頭人身、ひざまづいている様で、神像は怪異であり、この羊神の石像の高さは約十三センチ五ミリであります。
羊神には更に多くの奇異なる法があり、愛情、旺財、施降頭を行なうに特効あり。羊神を壇上に置けば、良く一切の邪降にかからず。羊神収降法。羊神招財法等。

古比神愛情法

 この古比神とは一種の獣神であり、古比神獣を壇上に置けば一切の侵犯してくる邪降頭を解くのであり、又多くの破り解く法や及びその他の法降があり。古比神獣は鎮法場の百降(諸々の降頭術)侵し難しの即ち巫法であり、必ずお祭りする神獣である。施古比神愛情法―キャンデイ及び食物等を古比神の前にそなへて修法をするのである。古比神獣鎮邪鎮法場法。古比神通霊法ー古比古老の石玉を彫って作った物であり、ひざまづいており、高さは約十ーーセンチである。法師は白色の顔料で以て古比神の頭の上に霊符を書き、甘文煙にくすぶらせながら念咒し、家の外に持ってゆき夜露にあたらせる。このサバ巫術の法具としては古鷹爪、古猿の牙、神樹葉、神樹皮、神筆、樹根、カラのヤシ、迷魂石、神木、木彫りの皿、魔石、雷驚木等があり。