犬神のこと

年月日

 昔、符呪を習っていた時、四十五年前に台湾の台北市に於いて符呪を習っていた事があり、それは民生西路所に学校があってそして警察局があり、承徳路をそれより少し歩いた所に曽文秀老師の壇があって、そこで符呪を習っていた。

 この曽老師は台湾の人であり、日本語は話せるが、しかし耳が不自由で全然聞こえなく、筆談で対応していた。そこでは数々の術法を習い、天兵天将を使う術には天兵を祭っている廟、又陰兵陰将を使う場合にはこれらを祭ってい有応公廟等に連れて行ってもらったりしていた。

 この時私と一緒に習っていたのはもと司機即ち運転手をやっていた。若いので小林と呼ばれ松山に住んでいた。もう一人は一覚法師の三人であり、この人は台中県の沙鹿出身であり、何人もの師について習い、最後の老師は曽老師だと言っていた。

 その時に曽師父はこれは少し邪法ではあるがと言って、狐を使う術を教えてもらった。それは犬神を使うのとほとんど同じやり方であり、仙童寅吉の話しの中でこれが詳しく書かれていて、犬を土の中に顔だけを出して埋め、そして餌をその前に置き、適当なところでその犬の首を切り落としてその首を祭ると言うやりかたであり、俗に犬神使いの家と言って、普通の民家よりは忌み嫌われている。

 これをやると子孫代々について来る物であり、旧、清水斎主のお話で、ある犬神が憑いていると言う人のその人の住んでいる屋敷の上で犬を見たと言っておられた。田舎の屋敷の上は非常な高さがある物であり、普通には簡単には登れない物だ。

 曽師父は大体これと同じようなやり方でやると教えてくれた。詳しいことは当然省略して申す。現在では動物虐待法があり、社会的に問題となろう。

 中国では「蟲」を養うという術があった。これらと同じように最初は良いが、しかし養うのをおろそかにしたりするとすぐに家に災難が降り懸かってくる物である。

 今、NETFLIXで韓国映画『設法』というのをやっている。この説法と言うのは相手に術をかけて不幸にするとか、殺すとか言う物であり、ここに日本の犬神が大活躍するのである。韓国映画ではこの他に『還魂』というのも面白く、これは術者同士の対決である。