太上神桃伝授紀

年月日

 神桃ノ術の其根元は太上道君伊邪那岐大神に出でたることは我神典なる黄泉比良坂大神実命(オホカムヅミノミコト)の段に於ても其片鱗を窺ひ得べし。
 然れども本伝は彼の仙道隠微の秘書たる淮南万畢術紀に収められたる所伝にして、水位先生は「此術ニテ一切ノ百鬼妖魅五毒不祥ヲ去リ家内ニ災害起ルコトナク一家平安ニ鎮ムル術ナリ」と曰はれたり。

 此術に用ふる神桃とは太陰暦霜月の候に至りても尚はよく霜雪に堪へ樹より落ちずして留りある桃の実の核に五色の絹糸を貫きて製するものにて永久家宝として子孫に伝へ得べし。
 深山野生の老桃樹には稀に此神桃の実の一、二個を発見することありと伝へらるるも、気流汚濁の現代に於ては之を求め得らるること殆ど不可能に近し。

 道士の長老○○翁は仙客の士なり、年毎に厳寒の山野を跋渉して霊眼よく神桃を見出し之を五台山本部に送り越されありしが、多年の尊き努力積りて其の数概ね篤信の士への授与を充し得る乎に達せるにつき、本部にて直ちに此術に用ひらるる様謹製修法の上、節分祭明けの立春五岳祭(二月五日)に於て混沌五岳真形大図原巻の神気にも感格修法を了し茲に拝送の運びとなれり。

 思ふに斯る稀有の自然産出に係る造化の霊物は神ながらにこそ入手し得らるべきものにして、たとへ此神術を知ると雖も其機縁に恵まれずしては、生涯を費して山野を探索するとも求め得られざるべく、二度とは再び入手し難き霊物なれば極めて珍重せらるべし。

 斯る道福を天親地愛の道友に相頒たんとして積年刻苦せられたる○○翁の高潔なる御努力に対し謹みて敬意を表すると俱に、類を以て相引くの玄理により御道念の同気相結びて此稀有の機縁に触れられたるを御同慶とす。

神桃の玄理

 桃樹桃子の神法道術に用ひらるることの原理に就ては道誌上に於ても屡々解説され、また外患攘除禁厭神法伝書を受けられたる士は其幽理の玄奥に通じ居らるる筈なるも念の為め左に先師伝承の秘説の数条を摘記す。

○桃の功験ある事は日本書紀古事記にも伊邪那岐命の桃をもちて悪鬼を避け給ひし事蹟を見ても災害を避くる事は知られたり。また漢土の書にも悪鬼を避くる事も多く載せたり。

○樹にも霊ある事和漢の書にも多く出て白沢図に大樹其精ヲ霊陽ト名ヅクとも、抱朴子に樹の精を膨候と云ふとも見えたり。桃は伊邪那岐命名大神実神とまでに名を負はせ給へり。

○桃には神呂岐神の御霊の自らに憑り給ふ理あり。また桃ノ気は、其樹より此神の御威徳によりて其精気の凝り出づるなるべし。桃は悪鬼の畏るる物なるに、其樹の精気の凝結して出でなば、身に纏ひ来る悪鬼は働きを失ひて禍を為す事の難き故あり。
(また身に憑りたる悪鬼も自然と身を離るるの理あるべし。)

 また先師は彼の外患攘除神法中の秘詞の一節たる「○○○○○○。○○○○○○○。○○○○○○○」の解説に於て

『○○○○○○は、悪鬼避けよなり。○○○は高皇産霊神の亦の御名なり。○○○は此神の陽気にて火気なり。○○は此神の恩頼によって生り出たる物なるべし。こは神典に其伝へなしと雖も実にしか思ひ合す事あり。此所が禁厭の大眼目に着く発端なり

と曰はれたるが、斯く霊威ある桃子のうちにも本伝の神桃は共優たる霊物にして、造化自然の産出に成り、神呂岐の神火の凝りに凝りて此桃核に精気凝結して霜雪を凌いで尚ほ樹より落ちず留れる也けり。前掲『禁厭の大限目」の一条、深く啓発さるるところなるべし。

施行法

一切ノ百鬼、妖魅、五毒、不祥ヲ去り、家内ニ災害起ルコトナク、一家平安ニ鎮ムルノ霊験あり
(省略)

○桃核の内部より茶褐色の油脂の如きもの次々と滲み出で来りて固着することあるは所謂る桃膠にして、桃本然の質なり。錐針等にて取除かるればよし。其侭にて差支へなし。

昭和甲辰立春大吉日
神仙道本部

備考

本書状(神桃在中)の封筒表面に「種子在中」と押印標示せるは、郵送中の紛失或は開封披見等を防止せんが為の措置にして他意無之、また万一郵送中に神桃の破損等ありたる際は新たに再送申上ぐべく速かに御申出相成度

※現在神桃は伝授しておりません。