マレー降頭巫術(1)

 茅山法術では御本尊に牛神を祭って修法する物はないが、しかしチべット宗教のボン教ではこれを拝む。又山蕃土人降頭巫術ではこれを『牛魔王』と称して修法する。銭鬼のほぼ倍位の大きさで、形は銭鬼と全く同じではあるが、しかし両角が生えている所が異なり、又銭鬼と同じく男女の像があり。これには牛魔王面具、牛魔王三木人(獲佑、饒命じょうめい、拘殺)、牛魔王黒降具、苗家牛魔王帯扣、牛魔王胎産降木人、牛魔王咒針一盒、坐執魔王咒針鬼、魔王猪頭皮降木人、牛魔王降木入8個(漏腸降木人、痴呆ちほう降木人、瘋癱降木人、断足降木人、鎖陽降木人、帯疾降木人、跛脚呆はきゃく降木人)等があり。

 世界の本、ニューツアーガイド五、パプアニューギニアの旅行案内の本を見ると、五十九ページ、アート、観光造形品の販売品ではあるが、全国から集められた造形品が常時五〇〇〇点ほど展示されており、一通りこの国の民芸品を理解出来る。値段も現地価格とさほどかけ離れておらず安心出来る。ただ原始美術品は法律によって一九七〇年以降のものでないと輸出は認められていないので、古い物はない。許可証がないと販売出来ない儀式などで使用されるものを展示した部屋もあるが、非公開。四十五ページ、みやげの代表は彫刻、各地に特徴のあるものが知られている。トロプリアンド諸島のものは極めて精巧な民芸品として知られる。セペック・アートと呼ばれる物は、精霊像など祭札に使われるものが基本デザインとなっていて、芸術性が高い。

 百三十ページ、以前は精霊の儀式が使われた、古い木像などを探すと、意外に簡単に手に入ったが、現在はそのような文化財を国外に持ち出すことは厳しく禁止されており、重大な罪となる。
百三十四ページ、第二次世界大戦後、この地域にも近代物質文明とともにキリスト教の伝導士が活発化し、精霊信仰に大きな転換期を迎えた。ために、精霊儀式は村人の中心から少しづつ変化してきた。特に最近では貨幣経済圏に入ったため、考え方が激変して、加えて貴重な精霊像などが国外に流出し、目に見える信仰対象もなくなり、再建もできず経に至っている地域もある。

 マレー降頭巫術では『石頭法神』を安奉するのがあり、これは特別なる石であり、これを石神として拝む。
 この石神の法神には必ず神石、黒胡椒、銀幣の以上を全部入れて封をして入魂修法をし、家の外で夜露に当たらす事三日聞、屋外に取り出す前には必ず咒文を念ずる事七遍本数は即ち石頭神を拝するのであり、まず二十一日間の基本法カの功夫を修緯するのであり、毎晩夜、白いロウソク一本に火を点じ、甘文烟を燃やし、修法者はお碗の中に水を入れ、符一枚をこの水碗の中に入れ、そして両手でお碗を持ち甘文烟の上でくすぶらせながら呪文を念ずる事七遍、そしてこの法水を呑み下す。

 このようにして連続して行う事二十一日間にして、必ず法カが増強する。この修法には石頭神上司順従法、石頭神順股法、蜈蚣毒咒術、石頭神召客法、石頭神引神和合法、愛情和合咒術、石頭神護身咒、石頭神勾魂術、石頭神故降侵害法、石頭神毒咒術、石頭神毒降頭術、石頭神定神咒、石頭神平安咒符、石頭神護命避禍、石頭神護身咒術、石頭神迷心咒、石頭神和合法、洗面増人縁、倆身人縁符、退病・退邪病・退殺符、鎮狂符、鎮邪術、増強法力咒術、相思咒符、石頭神退邪法等があり。

 『マレー巫術養鬼』は小木人を巫油を入れたガラスビンの中に入れ、両手はこれを握りしめて念咒し、そして外に置いて天地の気を吸収させるのであり、これを連続して行う事約ーケ月にして功徳円満。小鬼を呼んで事を行うにはガラスビンのフタを開いて念ずる事三遍にて良し。これには又養鬼通霊法とて、一枚の通鬼符を養鬼のガラスビンの上で焼いて回転させ、念咒する事三遍にして、これを家の外の夜露に当たらするようにすれば、この鬼はよく霊験あらたかと成る。

 『祭飛頭鬼』の修法は死んで一年経った子供のガイ骨を使うのであり、夜の十二時に針をさして中指の血で以てガイ骨に符を書き、甘文烟の上でくすぶらせながら念呪して、そして黒い布で以ておおいかぶせる。以上これを行なう事約ーケ月してこの飛頭鬼を駆使出来るのであります。呪詛に使う場合はまず泥入形を作り、この泥人の胸には仇敵の姓名及び住所を書き、この泥人をガイ骨の前に置き、甘文烟及び白いロウソクに火を点じ、法師は両手で甘文烟の泥盆を泥人の上に持ち、念呪する事二十一遍、そして術士は ロウソクのロウを泥人の胸にたらす事二十一遍、そして黒布でおおいかぶせる。連続して行なう事二十一日聞にして、仇敵は必ず術にかかり病いで倒れる事と成るのである。
別法にこの飛頭鬼を放って事を行なうには、夜の十二時に白いロウソク一本に火を点じ、念呪する事二十一遍にして、法師は鬼を呼びてどんな事をするのか命令すれば良し。
 そしてこの養鬼にはまだ『胎鬼祭練法』があり、そしてこれを使っての『胎降法』とがある。この胎鬼は巫術の一種の鬼であり、産後夭死した胎霊を祭練して胎鬼とするのである。

 『祭猫鬼法』は横死して死んだネコの血を少し取ってガラスビンの中に入れ、このビンに猫魂符を書き、夜の九時に白いロウソクー本・甘文烟に火を点じ、ガラスビンのフタを開いて物を入れ、両手はビンを握りしめて甘文烟にくすぶらせながら念呪し、このビンを家の外に持ってゆき、 天地の精気を吸収させるのであり、 以上にこれを行う事約ー力月にしてこの猫魂が通霊し、声に応じて出てくる。法師はこのバケ猫を使うのであり、使う時には祭練の呪文を念ずる事二十一遍にして駆使出来るのである。猫魂(猫霊)は密室の下に置いておき、毎日朝晩御飯や卵・魚等を供えれば良し。

 以上これらマレー養鬼法のかずかずがあるが、現在では自分の我欲だけを重要視し、他人を無視する小人しょうじんや社会的に今や大問題と成っているストーカ対策等に使えば良いであろう。人によっては殺される事件も現に起こっており、毒には毒で以て制するのであります。
 『南洋迷魂術』は本法を行って他人の家に入るとも、人の魂魄を迷わして相手を寝むらせ発覚しないのであり、奇験。これは死体を包んだ白い布を取り、甘文烟にくすぶらせながら念呪する事二十一遍、 これを行なう事三日聞にして、この布少しを取り体につけて夜に目当ての家に忍び入れば、犬もこれを見てよう鳴かず、家の人は全然気付かない。但し施法者は家に入って出る時、必ず小便を家の中にたらしてこそ、離れる事が出来るのである。