本部だより 昭和三十六年元旦

年月日

謹て聖寿の無窮を祝禱し奉り 道士各位の御霊健を祈上候
昭和三十六年元旦
神仙道本部

道統第四代神仙道斎主 清水南岳
副斎主 関東支庁長 根岸昭之
副斎主 開西支庁長 溝川古鏡


本部だより

 本部移築の際は、何分にも屋外では屋根外壁の取壊し作業、屋内では埃を浴びつつ荷造り梱包搬出といふ状態、移築迄の二ヶ月に亘る中継所生活は斎主以下山積した荷物の間の僅かな間隙で仮睡をとり、未明から土方大工手伝雑役夫に早替りといふ始末で、梱包一つ手つかずのまま新事務所へ搬入、為めに引越し後の膨大な整理は本年一杯を要するであらうと懸念されていましたが、何とかやっと事務関係と書庫の整理迄漕ぎつけました。

 然しまだ屋外建築現場の後片付け迄には手が廻らず、堆積した廃材、築きかけの石垣、一種異様な景観のままに新年を迎へようとして居ります。

○右の様な実情の為め拝送物等も遷延のままで、真に申訳なき次第でありますが、漸く一段落と倶に道誌も新年号より順刊に復し、待望の道場直授講伝会も余すところ道場屋舎施設の具現次第開筵を見ることとなりました。
 多忙の裡にも近年にない明るい祝福に満ち満ちた新春を迎へ得ることを御同慶に存じます。
 尚ほ新年号は年末印刷所多忙混雑の為め歳晩迄に刷り上りが可能か否かが一寸気づかはれますが、遅くとも新春早々の発送となります。


○道場直授講伝会に就ては、大司命節中根岸関東支庁長・溝川関西支庁長来山され、直授講伝課程等諸般の打合せを了へました。
 道場屋舎の施設を急ぎ、桜花の頃には是非実現を見たく幹部一同念願致して居ります。


○例の宮地美数氏発出の怪文書の件に就ては、其後(十八日)地元公民館長にして篤信の神仙道道士たる森下護国神社宮司立会のもとに、県神社庁長も列席し、美数氏より正式に謝罪と反省の意を表し、且つ謝罪文の提出がありましたので、斯る信仰上の問題は寛容の精神を以て処置するを妥当と考へ、おほらかに諒承することと致しましたが、抑もの根元は、美数氏が水位の神仙道は低級なりと表明して水位先生将来の神界の実相・神仙の実在・神法道術の所伝・求道上の信念等を迷信視し道士を蔑視するところより魔障の神仙道攪乱工作に乗ぜられたものでありまして、往年水位所伝偽作売法の廉にて神仙道より除名せられた某方面と屡々来往接触を続けていた事が今次のマガコトの直接の動機となった様であります。

 加ふに美数氏の先天的な病的幻想と重大な誤算を織込んだものが例の捏造怪文書のナンセンスとなって現れたものと判断されます。
 道統の所在に就ては道誌六十六号所載の「水位先生と其門流」を精読せらるれば自からに明らか、水位先生の実子にして後嗣たる一誠氏(大正五年、二十五才を以て帰幽)すら道統とは全然無関係であったので、況んや水位先生の実子でも養子でもない美数氏が、僅かに未亡人によって宮地姓を得たといふ理由だけで、何の所縁もなく突如として道統が天降る現象は到底あり得ない筈で、現に第二代道統継承者方全寿真宮地厳夫先生の後嗣第三代宮地威夫先生(故神仙道総裁)より道統第四代を預る清水現斎主の終始一貫せる友情を以てしても遂に美数氏に対して一法一術をも授けることが出来なかったのは、其根元は美数氏の「水位神仙道は行者的にして且つ低級なり」とする無神論的信念が相容れられざる為めで、私的な友情と公的な道統問題とはハッキリと区別すべきが天地の公道であり、之は玄道の掟律たるのみならず、水位先生の家訓にも特に明記して居られるところであります。

 若し清水斎主が此の公道を誤り私的な友情を以て斯る信念の持主たる美数氏に道統を授けたりしとせば、果して神仙道は如何なる結果を齎らしていたであらうかを思ふ時、真に寒毛卓立を覚ゆる次第でありまして、霊統上の神祇の御加護は素より偏へに水位師仙の御啓導の賜物なりしを拝謝し奉る次第であります。


○因みに怪文書によれば、恰も膨大なる水位先生の貴重御遺稿を美数氏が本部から回収したものの如く印象づけるよう書かれてありますが、元来美数氏の手元には一枚の御遺稿すら無かったので、同氏が某家より貰ったとて持参した水位先生の習字練習本三部を返却したのが真相で、水位先生の膨大なる貴重御遺稿類及霊宝道書真形図等は其道統と倶に第二代方全先生に伝承され、其嫡子第三代威夫総裁より清水現斎主が護持するところのもので、道統的にも家系的にも美数氏とは些かの関係もない事であり、右に就ては八月下旬美数氏の実兄二人と立会の上、右の事実を確認せしめ、また美数氏は数年前より自発的に神仙道より離脱し事実上無関係となってはいるが、改めて今日より名実倶に一切神仙道より離絶せる事を再確認しあったのが事の真相であり、怪文書に付会羅列せる奇怪なる幻想的捏造事項の如き立会の実兄等と雖も恐らく夢想だに為し得なかった事でありませうが、既に美数氏より立会人を以て正式謝罪の意を表している今日として個々の捏造事項に就ての論詰は言挙げせざるを美とし、嘗ては本部職員の一人に加へ且つ道統の門内に温く包含せしめんと努力せる清水現斎主の度量と友情に対しても美数氏の所謂る反省なるものが面従腹背ならざらん事を祈るものであります。


○歳晚多端の折柄道士各位の御勇健と御多幸にして道福豊かなる新春を迎へられますよう、ここ土佐五台山の新道場事務所より遙かに御祈り申上げます。(十二月二十五日)