中岳真形図伝書上の諸注意

年月日

拝啓 弥々御勇健にて斯道御精修之段大慶に奉存候
 陳者予ての御約束により本日を以て霊統上の神祇師仙に執奏の上、茲に霊宝混沌五岳真形図中岳之図(伝写用副本図)を拝送申上候間凡そ一ヶ月の期間を以て伝写を了へ、此の副本図は必ず書留郵便を以て御返送相煩はし度候

 申す迄もなき事乍ら伝写に当りては原巻奉斎の本部神殿を遙拝の上同封の受図祭文を浄書奏告せられ、心身の清明を保ちて此天任の御道縁を成就せられん事を祝禱仕候
 (尚ほ受図祭文は御奏告後本部宛御提出相成度、御自宅にて御奏告の際は祭文末行の顕界昭和  年  月  日とあるの個所は御奏告の当日を以て其日附とせられ度候)
以上

施行法等に就ては伝写完了後、副本図御返還の後に於て一書呈上仕り度存じ居り候
昭和  年  月  日
神仙道本部道統第四代 清水南岳
          殿

左記伝写上の諸注意熟読相成り度
一、用紙は和紙の中でも図引紙づびきしが透しよく、墨、朱にも縮みが少く、且つ後に表装させる場合など裏打ちし易くまた墨朱が散らないので適当と考へられる。(副本図の用紙が即ち図引紙である。)

一、伝写用の副本図の上に図引紙を敷き重ね、先づ鉛筆で輪廓を透し写販る。(朱の部分は赤鉛筆で写し取る。)図紙の向きや身体の位置、手の角度など色々に変へて写しよい様に工夫する。後に墨、朱で輪廓内を塗り埋めてゆく場合など特にこの工夫が大切である。輪廓を誤ると次の墨朱の塗り込みの際に取返しのつかないことになるので注意。写し誤った場合にはゴム消しを使はず其侭にしておき後で胡粉で塗り消せぱよい。紙質上、図引紙に消ゴムは使へない。

一、筆は勿論新しきを用ふるが、余り細いものや穂の長いものは使ひにくい。中字用の穂の短か目のものがよい。(但し朱筆は細字用の短穂がよい。)墨は普通よく使はれる「紅花墨」系統のものは避けた方がよい。紅花墨は光沢はあるが、墨面が光るので観想修法の際など不適当である。朱墨しゅずみ赤口あかくちと黄口とあるが赤口の方がよろしく、鳩居堂製の「金鳩」の赤口など手頃で、時価は五匁物で五百円内外である。(道誌六四号第四面記事参照のこと)

一、墨は出来るだけ濃く磨るが、墨汁が副本図や用紙の上に飛散せぬよう注意し、別紙で図紙の上を予め掩ふておくこと。往々にして飛沫や筆の誤転の為に副本図まで台無しにした前例があるので、墨や筆の取扱ひは置場所を一定し節度を正して用ひられたし。(朱墨しゅずみは少しづつ、度々磨り足して用ふる、黒墨とは硬度が違ふから軽く軟かく磨ることが肝要である)

一、鉛筆書きの輪廓が出来上りたらば原図よりはずしてよく対照し充分に確かめた上、原図(副本図)を前面に置き、一筆々々入念に見較べつつ、先づ輪廓に沿うて、外ヘハミ出さぬ様筆でえどってゆく。前に述べた如く、用紙の角度、体勢、手の位置等を、運筆し易いようにエ夫しつつ、両側の輪廓をえどっては内を塗り埋めてゆくのであるが、運筆法は普通の書道とは異るので、穂をねかせ加減にして刷毛を使ふ様な要領に用ひるとよい。其の運筆の為に紙を廻して角度を調節する必要を生じてくるので、試みに別紙に鉛筆で輪廓の線を引き此の運筆法を研究してみることで、墨をたっぷり含ませ、前記の要領で若干太目に運んでゆくのである。乾いて来ると濃淡のムラがはっきり浮んで来るから、うすい部分へは更に重ね塗りをして濃さを一様にする。

一、この墨、朱の塗り込みは、全図の中央部あたりから始めて、漸次外方部へ及してゆくことである。之を外側や左右側方から始めると、中央部に及んだ際に、外方のまだ乾ききらない墨が手首や臂に附着して、切角の図面を汚損してしまうことがある。乾いている様に見えても、別の紙を掩ふて、その上に手首や臂が当るやう留意して欲しいものである。

一、くどい様であるが以上の注意をよく守り、副本図を敷き写しにしたままで墨汁を塗るようなことは絶対に避け、必ず本図を前面において其れと入念に一筆々々対照確認しつつ塗り込んでゆかないと、かりそめの軽忽から取り返しのつかない失敗を仕出かし、又候写し直しといふことが有り勝ちで、此種の伝写には霊的障礙も必然的に伴ふものであるから呉々も注意して頂きたい。

一、朱は黒書が終ってから、充分に墨の乾きを待って行ふこと。更に念の為め、墨書と朱書の相接している部分は少し空白を残しておき、充分時間を置いてから後刻塗り埋める様にすると黒朱の混色を避けることが出来る。以上の注意を守らないと、黒墨が朱の接点部に滲んで来て、どうにもならない結果を招く。

一、さりながら専門の書家ではないから所々墨朱のハミ出しも絶無を期し難い。その様な個所は、充分に乾いてから、其上を胡粉ごふんで濃く塗って修正してよい。近頃文房具店で売つている「ポスターカラーの白色」が即ち胡粉を練り固めたものであるから(容器入りで時価五十円位)之を求めて用ひるがよい。用法は豆粒ほどを小皿の上にとって、新しい細筆に水を含ませて濃く○○き、ハミ出しの上に塗ればよい。同封拝送の副本図にも此の胡粉で修正した個所があるから参照せられたし。

○尚ほ伝写図には決して首題(五岳真形中岳図の名称)は書き添へられぬ様、此仙掟を厳守相成度し。