茅山六甲壇の修練

年月日

 入門した当時よりすでに数十年の歳月を経過しており、数年前にこの南洋にいた師父は亡くなっている。亡くなる前に彼の弟子であった人物が勝手に六甲壇を人に伝授し始めた事により、非常に憤慨しておられたが、それを真の太古の六甲壇を信じるに足る人物に伝えると申されていたので、お願い申し上げてこれの伝授を受けた。

 それはもとの六甲壇と同じ大きさであるが、すべて太古の文篆で書かれてあり、読めない物であった。六甲壇をやる人は今ではほとんどいない。それは六十一日間の精進潔斎が必要であり、つまりは肉・魚に五辛の物を食べてはならず、異性との肉体的な交わりもだめであり、朝晩の感想修練が必要だからである。

 また物が見える人とかが、六甲壇の修練をしてすぐに六甲六丁の神が見えるとか言う人がいたが、これらの見えると言う人達はやればやる程今まで見えていた物が見えなくなるのでやめている事も事実である。

 それはその人達に憑いている物が見せているからであり、世に良く言う霊感があるだの、私には霊が見えると言う人達も、すべて何らかの霊が憑いている。そこに由緒正しい六甲六丁の神兵神将たちがやってきたので、ビックリしてそれらの霊どもは逃げてしまったからである。

 勝手に自分の茅山を開いて教えだしたその人は養鬼もやり、今やマレーでも有名な人ではあるが、ある日二人の人物が尋ねてきて金の無心をした。出せ、出さないの果て、相手二人はそれぞれ拳銃二丁を取り出したので、この茅山の師匠は山刀を取り出し向かったが、相手の拳銃が火を吹き腹部を打たれた。すぐに救急車で国境を超えて病院に行き緊急手術となり、さいわいにも命は助かった。犯人は捕まってはいない。

乍牙づあやあ鬼霊の作用伝記

 私が小さい頃の時(これは師匠の子供の頃の話し)、陸婆さんの神壇にいた時、ある朝早くホウキで地面をきれいにしてから、符の紙を切っていた時、突然犬がほえたので頭を延ばして見ると、一人の婦女か来た。

 彼女は包みを持って来ており、言うにはこれは自分であぶってこしらえたバナナ乾であり、おみやげとして持って来ました。陸婆さんが最も好きな食べ物であり、言うには良く鬼神に通じる食品であると申す。

 その婦女はあいさつをしてから、私の亭主が最近暴力をふるう。陸婆さんが原因があるのかと聞くと、あるにはあります。亭主が秀々(名前)の色気があるとほめたたえるので、私が一気にののしると、亭主がなぐってきたのであり、みんな秀々が引き起こした。おばあさん、どうかお助け下さい。私はその婦女が秀々を責めるのを聞いて、驚き又いきどおりを感じた。

 秀々は私に詩詞や又礼儀を教えてくれたのであり、そんな事はないはずだ。女の亭主は本当にブタ野郎だ。私が一気に振り向いて見ようとした時に、手指を刃物で切ってしまった。陸婆さんは聞いて驚き、しばらくしゃべらなかった後で、そして乍牙符を書いて一個の法缶を加持してその婦女に渡した。

 毎晩符を焼いて法缶の中に入れ、通り過ぎる陰霊を乍牙鬼として呼び召すのであり、さすれば秀々は御亭主をののしるでしょう。

 その婦女が去った後、私はお茶を上げた。陸婆さんは小さな皿にバナナ乾を盛って乍牙鬼の鬼霊及び諸々の養鬼霊達に供えた。又ひとつかみ取って家の外に向かって投げて通り行く陰霊に供えた。お茶の後に陸婆さんは通用符を書いた時に一枚の黄紙に血の跡があるのに気ずいた。

 彼女はどうしたのかと聞いたので、手指をうっかりと切ってしまった事を申した。彼女は私に血のついた紙をさがし捨てるように言いつけた。気をつけて検査したら、三枚位の紙にも血のついた符紙があった。

 一か月余りを過ぎてからある日の事、又その婦女が来て言うには、彼女の亭主は秀々に侮辱ぶじょくされののしられたと。陸婆さんは符は水に混ぜて道にまけばいい。法缶はベッドの下に置けば良い。男は浮気者であり、又繰り返せば使える。その婦女はとてもありがとうと言って帰った。

 此のあと秀々は雨ふりや雷が鳴る以外は、毎日私の家に来て家前の日をさえぎる木の下で、木製の腰掛けに座り針仕事をし、又私に詩詞を教えた。彼女はますます私を気に入り、私の子供と思っていると言ったり、又わたしの額にテューをした。

 二年後になってそれは上世紀の四十年代の末期、移民新村の法律が出されそれぞれ散り散りになった。陸婆さんは中国にもどり、秀々もシンガポールの親戚を頼って去って行った。

 又過ぎる事十数年後、それは五十年代後、私は大病を患った。病の中で陸婆さんが残した秘伝書を詳読した。乍牙編の後に小注があって、それは乍牙恐るべしや、潜伏作用があると、乍牙の作用には反作用があると註明している。

 そうそれで分かった。当年手指を傷つけその時キット符紙に血がしみこみ、陸婆さんがその紙を使って乍牙符を書き作用したのであり、それがその原因で、私は乍牙のおそるべき相反する潜伏の影響を受け、秀々はそれで反して常に私を愛した。

乍牙鬼

乍牙鬼

乍牙爐

乍牙爐

乍牙符缽

乍牙符缽