紅臨教

年月日

紅臨教とは

 紅臨教は中国の南部、特に広東、広西等の地に伝授され今日まで伝わってきたものである。ここで紹介する法術は、これまでに紹介した各種法術とはまた別の師より伝授を受けたものである。
 これは華光大帝(正称では敕封五顕華光太帝と申され、この名は六甲壇にも見られるものである)をお祭りし、法壇の主神となしてこの紅臨教の法術を行なうものであり、その功夫の内容は文法と武法とがある。文法とは治病駆邪祈福等を行ない、武法とは護身制敵であるが、この紅臨教では武法が主である。ちなみに日本ではこの武法方面の術に関しては全然伝わっていない。

 五顕華光太帝とは民間の尊称であり、正統な道教では斗口霊官馬元帥(馬元帥)であり、道教の護法天将三十六元帥の中の一人である。馬元帥の姓は馬、名は勝。その形は三頭九目、民間では常に一頭三目と描く。玉戟金磚を手にとり、大犀に騎坐し、背の後ろには飛翔丹符の烏(封神榜の中で申す所の火烏兵)千里眼・順風耳を随従し、その座下には収服した白蛇大将軍がいる。五顕華光呪即ち紅臨大呪訳の中でー長槍収斬白蛇精ーはこの事を指す。伝説では馬元帥の性格は剛烈、武功は高強である。故に五顕華光の武法は大変有名であり、また馬元帥は雷火を使うのにも秀でており、それで華光の五雷法はまた特に威力があり、南方の民間では火神と尊んでいて、また財神としても拝まれている。

 この門派の特色としては当然武法を重んじるのであり、その用法はすさまじく威猛である。某師父が当年法を伝えた時、手で牛の頭をなでさすれば、この牛はすぐに倒れこんだ。屠殺してから見てみると、その全身の骨は皆砕かれていた。また或る師父は生きている鶏を刀でいくつも切り刻み、そして又それをつないで生き返らせたとか、驚くべき出来事が数多くある。
 また、文革の時に三人の男が木にくくられ、ぶら下げられ、殴る蹴るの拷問を受けた。次の日に一人は死に、一人は重症であったが、もう一人は何ともなく自分で歩いて帰っていった。この人は抗打の法術の使い手であった。


馬元帥1

馬元帥

馬元帥2

馬元帥

馬元帥3

馬元帥

馬元帥4

馬元帥

馬元帥5

馬元帥

殷元帥1

殷元帥

殷元帥2

殷元帥

殷元帥と王霊官

殷元帥と王霊官

王霊官

王霊官


紅臨教の概要

 この紅臨教の御神位は黄布に勅封五顕華光大帝、右千里眼、左順風耳と墨書してあるものでその高さは約五十センチ、横幅は約三十センチである。この道術を行なうのにはこの神様をお祭りしなければならないのである。

1.紅臨大教請師呪、送師呪
2.紅臨大呪訣
 これは五顕華光呪を唱えてゆき、喚と唱えて手に符字を書き、師父到と来た時に頭をなでさする。この符呪門派はこれらによってその力をつけてゆくのである。

3.小打功夫
 この功夫はどの場所、どの環境、どの状況下に於いてもこの功夫即ち力が出せるものであり、比の力をひとたび出せば、どのような神鬼、邪鬼或いはどんな教、どんな法を問わず、すべて自動的に退避するものである。此の功夫の用途は広く、治病、止痛、駆邪辟鬼、一切の妖魔、邪鬼、邪神に沖犯されて引き起こした病をも治し、六畜の病をも治し、護身防打、自身の抗打能力を増強する道法である。功を多く積み質量を高めれば、七、八人の男になぐられても何ともなくなる。また此の功夫は相手を傷つける事が出来るが、この場合には相手の体に触れる事が必要である。

4.護身法訣
 これは多くの用途がある功夫であり、駆邪方面にも使え、此の功夫の主要なるは防身保打であり、焼いて呑んだりこれを帯びれば平安となり、車に置けば出入り平安を保つ。これは茅山總壇法の中の護身法とほぼ呪文が同じではあるが、これはまだ人を傷つける、傷害する事が出来、その場合の呪文の唱え方は異なる。

5.四縮五横訣
 この功夫は主要的には家の中の財物が盗まれるのを防ぎ、或いは外出に身に帯び、五雷禁と配合すれば邪法で盗まれるのを阻止し、五雷発と配合すれば泥棒を防ぐ。この功夫はただこれらの範囲に限られ、防身保打や人を傷つけたり、治病したりする事は出来ない。

6.寿星訣・通絡訣
 比の功夫の用途は広く、男の子を求めたり商売繁盛を求めたり、子女がなければ子女を求めたりとその応用の範囲は大きい。

7.坤脉訣
 治病に用いられる。

8.七味仙丹訣
 治病に用いられる。

紅臨教の奥伝

 紅臨教には更に奥伝があり、小打功に対して大打功夫がある。

1.反打功夫
 此の功夫は攻撃性の道法であり、相手に当てれば地面に倒れ、重ければ人の命を取る。

2.翻打訣
 此の法は相手の攻撃を自分の力として、反撃して相手に返すのであり、敵は自傷するか或いは死亡する。

3.小陰陽占打・大陰陽占打
 比の法は軽く相手の体に点ずれば、相手は力がなくなり、反抗能力をなくす。重ければ人の命を取る。

4.影打
 此の法は相手の影或いは足跡に、施法すれば人を傷つける。

5.喚打訣
 その音を聞けばそれに向かって放てば、相手を傷つける。

6.五雷掌
 此の法もまた攻撃性の道法であり、剛猛にしてすさまじい。一度手を出せば人命を取る。伝聞ではある師父が数メートル離れた距離から、お碗位の大きさの木を吹っ飛ばしたとか。これにはまた借光法、五雷結、五雷発、五雷振、五雷禁等の五雷法があり、すべて打人である。

筆者の体験談

 この反打を使った体験談がある。私が修行で某所に行ったおり、その入り口の所に一匹の犬がいて、私がそこを出入りする度に狂ったように吠えまくり、向かってくる有様であった。ある日の晩飯の後に散歩から帰ってきたとき、この犬がまた吠えまくったので黙らせようと思い、手のひらに反打の符を書いた。この反打の符は中に虎の字が入っているので、ちょうど悪犬に対応出来ると思ったのである。四、五メートルの距離から打ち当てると、この犬はすぐに尾っぽを垂らし、狂ったように吠えていたのが、低く沈んだ泣き声となり、ずっと哀れな悲鳴を上げていた。