使魂法秘事

年月日

拝啓 愈々御霊健斯道御精進の段大慶に奉存候。陳者昭和二十三年夏を以て水位派神仙道道士会設立され、幽顯一貫の玄理に本づき水位先生御帰天後の門人として、神集岳を中心とする仙境千万年の修真生活に於ける幽的結盟成りてより茲に二歳星を迎へんと致し居り候。

 此間結盟当初の公約にもとづき宮地宗家伝統の龍窟をひらきて第一次特別相伝公開され、極めて少数の道士に対する大己貴神御法外患攘除神法(相伝錄第一巻二三頁参照)の付嘱を見、次で二十四年春を以て第二類玄胎結成秘詞の相伝を允され来り候処爾来満一年を経過せる今日尚ほ第一類使魂法秘事の公開なきため各地力篤信の道士より熱烈真摯なる要請に接し居り候現状に御座候。

 然る処右使魂法秘事類は神仙道に於て特に深秘とさるるものに有之、伝法上に於ても言別けて道統の神真師仙達の冥護を請はざる可らざる霊的手続を要し、其の修用霊符等に関しても宗家に於て或部分は一々手書を以て伝写の上お授けすべき分野もありて、極めて慎密複雑なる手続を必要とする関係上自ら付嘱受伝道士の詮衡範囲にも或種の限定を加へさる可らざる事情有之、種々特殊条件を考慮しつつ歲月を経過したる処、幸ひ周境の機縁熟して今日を以て相伝公開の運びに立到り候に就ては左記内規等御知せ申上げ置き候。

 斯る仙法神秘の伝法に接し得べき貴台の道福に対し謹みて敬意を表すると俱に、速けく勝縁を以て道要の伝言を得神通霊感の太宗に徹せられん事を至嘱候也。

第一次特別相伝第一類 使魂法秘事相伝目錄

一、神通馳魂真言

 相伝録第一巻(十一頁)に伝へられたる招運魂辞は、もと使魂法秘詞の一たる「神通馳魂真言」による運魂を帰入招蔵せしむるために用ふべき秘唱なることは当時其章下に於て既述せるが如し。

 本真言しんげんは凡ゆる使魂法に修用さるる秘辞にして其の辞義は即ち首題によりて自ら明かなり。されば霊感神通の太宗たる使魂法に通ぜむとするには、必ず此の神通馳魂真言と招運魂辞の両秘詞を心得ざる可らず。

二、童子感想法全伝

 水位寿真人曰く、童子感想の法は神仙大いに秘する所にして浅心の人に洩す時は必ず其の咎を受く。此法軽授すべからずと。蓋し十二使魂法の第始にして脱魂の玄関たる坐在立亡の真入法たり。

 其のおほよその輪廊は霊感使魂法訣に収載せられたれども茲に付嘱さるるところは其の完結たる総秘詞並に施行法全伝なり。

三、感想一法

 分魂顕出法として水位師仙が最も推奨せられたるものにして極めて道要の伝言とす。本法は神術の秘篇たる「神仙霊含記」に感想一法として特記せられたるものにして、其の当初、鏡一面を用いて自己の分魂を出現せしめ、逐に魂をして千里の遠きに使ふの仙法たり。

 此法至極に達するに於ては、数個の鏡面を以て数人に分身することを得るの伝あれども茲に言及の限りに非ざるべし。

四、夢魂感通法(枕中符施用法)

 本法は枕中符を用ひて夢中脱魂を得るの神術にして玉女隠微にも其法を脱き古来仙家に於て甚だしく珍重すと雖も其符伝絶滅して斯術の眼目たる枕中符を知る者なきを千歲の憾とせり。

 水位真人出でて遂に天窓を開き之を玄台に得て其の真符を明かにし之を後進奉道の士に伝へたり。方今之れを現界肉身の裡に受くる者、夫れ師恩の懇ろなると仙縁の厚きに感佩すべきなり。(霊感使魂法訣第七頁参照)

五、太上老君 夢中ニ五岳ニ通フ符

 太上老君とは上天太上幽宮紫真殿に鎮り坐す三天太上大道君伊邪那岐神にして神仙の大祖に坐すなり。本符は首題の如く太上老君の製に係り、夢中に魂を脱して五岳の神仙境に感通すべき気線を結ぶ霊符にして実に老君親授の重符たり。

 既に夢中飛魂を得て諸種の境界を見聞すと雌も仙境神府の境に入る能はざるにくるしめる道士は、蓋し此の一符を得て道統正真の符力に歓喜随仰する所あらむと爾云しかいふ

◎霊宝五岳真形図の図気感格修法

 使魂法及び玄胎凝結法に五岳真形図施行法を併修して共功速かなるは古神仙の遺教にして先師の夙に力説せられ給ひし処なり。而も世上流布するところの所謂五岳眞形図と称するもの二十余種の系統を数ふれども、一言以て断すれば尽く偽図なり。

 師仙水位真人が霊真の仙位を得、七宝の玄台に発して其のしるしとして神授せられたる霊宝五岳真形図真軸一巻は、春秋四十余年を雲霧の裡にかくれたりしが、天運順環水位派神仙道中興の道業に際会して宗家の龍窟に出で、茲に奉道誠心の道士に授かるべき使魂法二符に図気感格の結縁修法を施行さるる事となれり。受くる者必ず心せらる可し。

昭和二十五年五月五日
高知局区内五台山
神仙道本部
振替徳島一九五〇〇番


 弟子来リテ余二謂テ曰ク、脱魂ノ術アリヤト。余答へテ曰ク、真ニ其術アリ。魂ノ身ヲ脫スルヤ始メハ夢ノ如ク、真境ニ至ラント欲シテ中途ニシテ体帰ル。此ノ如クシテ月ヲカサネ(是レ夜脱ノ魂也。)竟ニ真境ニ至ルヲ得。

 其道路或ハ橋梁有リテ其高キコト虹ノ如シ。或ハ大山有リテ其峙ツコト壁如シ。之ヲ歩ムニ霊魂戦慄ス。(之ヲ歩ム霊魂ハ自ラ霊魂タルコトヲ知ラズ。肉体ヲ以テ之ヲ歩ムガ如シ。妙ノ極也。)

 此ニ於テ之ヲ現世ニクラブルニ則チ現世ニアラズ、又夢ナラザルヲ知ル。忽然トシテオツレバ即チ真境に至ルコトヲ得。是脱魂ノ始メ也。(夢ニ似テ夢ニアラズ)此ノ如クシテ月ヲ累ネ真境ニ入ルニ霊魂ト肉体トヲ弁ゼズ。

 微ナル哉、微ナル哉、無極ニ入ル。神ナル哉、神ナル哉、不測ニ至ル。是脱魂法ノ大略也。(玄道或問)

 之ヲ存ズレバ則チ在リ、之ヲユルガセニセバ則チ亡シ。之ニ向ヘバ則チ賢、之ニソムケバ則チ愚、之ヲ保テバ則チ仙、之ヲ失へバ則チ凡ナリ。之ヲ得ル者ハ幽顕に出入シ、遠ヲ望ミテ以テ百憂ヲ忘レ、深キニ臨ンデ朝飢ヲ知ラズ。入リテハ千門の愰恍ニウタゲシ、出デテハ朱輪ノ華儀ヲ駆ル。故二之ヲ得ル者ハ仙ナリ。(法訣)