梅山教の狩猟術
梅山狩猟術(マタギの術)
<上集>
1.蔵身呪
狩猟に行く前に、家の中で唱える事二、或いは三、七遍、樹木の中に身を隠すの意味。
2.蔵身呪
自分が石になって我が身を隠すのであり、山に入ってすぐにこれを行なうのであり、剣指で空中に符を書きながらこの呪文を唱えるのであり、唱える事一遍。そして以下を唱える事一遍、剣訣で空中に書きながら呪文を唱える。
3.開鎗呪
剣訣で念じながら符を書き続け、そして銃を打つ。
4.旛鎗盗子
盗子とは弾の意味、鉄砲を収める法であり、念じながら旛鎗諱の符字を書く。
5.放生呪
ある時は殺せない場合があり、その時に唱える。
6.黒殺神呪
日常的に唱える物である。
7.欒巴呪
8.祖師呪
術を行なう前に祖師に通じる為に唱える。
9.蔵身呪
10.鉄牛呪
鉄牛水法は自分の護身に非常に大事な物である。
11.黒殺呪
12.翻壇呪
張五郎の呪文である。
※9~12は水法の修練であり、各念じる事最少七遍より四十九遍で、これを四十九日行なう。 1~4の符字を剣決でそれぞれの呪文を唱えながら水碗に書く。
13.
事を行なってから終わりに此を念ずる。
14.開山開鎗梅山開狗總呪
15.往生呪
16.催山呪
17.扞山呪
18.逼虎呪
19.催神呪
獲物を来させようとしても、まだ来ない時にこの催神呪を唱える。
20.放生用
ある獲物は打たない時もあり、その時にこれを唱えて逃がす。
21.発薬用
火薬を配合する時に唱える物であり、これをやれば霊験ありと申す。又これは水碗を使っての水法と一緒に練習すると良いとの事である。
22.観師
土を動かす前に唱える物であり、九牛の時には拍手して左手は陽九牛の印、右手は陰九牛の印を結び少し動かすのであり、陰五雷の時にも拍手一回して陰五雷の印を結び、陽五雷の時も拍手一回して陽五雷の印を結ぶ。又普段にても唱えて良し。
23.武器
獲物が近付いてきて、身にそれぞれの武器がある場合に唱える。ない場合は必要なし。一、二、この時にも銅釘・鉄釘の印を結ぶ場所あり。三、四、五。
24.収気呪
物にはそれぞれが気を放っている物であり、その気を収める法である。
25.収影呪
山を歩いたとしてその人の影・足跡を消す法であり、そうすれば人が来たのかわからなくなる。
26.拝山呪
これは一種の催山呪文であり、前の催山呪と同じ。
27.煥山呪
これは水法の修練にも使え、水碗の中に符を書きながら呪文を唱えるか、或いは符を焼いて水碗の中に入れたり、いづれも四十九日の修練であり、この煥山の目的は山の動物等を来させるのであり、又闘法も又この中に含まれ、相手の術士等を倒すのも又そうである。
<下集>
1.請張五郎呪
2.浄天地呪
3.弟子元山観請、馬上観請
4.
法術を行なう前に先にこれらの物達を収めるのであり、ある物は力のある物達もいるからであり、手を出せないようにするのであります。
5.千斤匝・万斤匝の時に印を組む。
6.
法師達を収め取る、手を出させないの意味。四縦五横の訣を行なう。自分の身体を山や祖師と合わせるの意味。
7.開鎗法、別一法
これは鉄砲を打つためだけではなく、山に入ってから唱えても良い。
8.
ある呪文は大毒を含んでいるのであり、邪法を行なう者たちに対するのであり、それらの者達を追い払うのであります。
9.
瓦に符を朱書するのであり、外側・中側いづれを問わず、これに対して呪文を唱える事七遍、或いは二十一遍、四十九遍行ない、老君訣の印でこれを行なう。これを合計行なう事四十九日して完成であり、山に入る時はこれを持ち、家にいる時はこれを壇の所に置くのであり、これは一種の宝具であります。
10.
この呪文は非常に強力なる物であり、山には霊達や樹精・妖怪がうろうろしている物であり、それらの物達を取り締まるのであります。
11.
鉄砲を入魂するのに使う物であり、鉄砲に対し呪文を唱え、大金刀・日月二光の時は印を結び、行なう事四十九日。
12.鎗一法
前のと同じあり、鉄砲に対して念じ行なう事四十九日。すべての呪文は最低七遍、或いは二十一遍。四十九遍であり、日にちも短くて七日間、或いは二十一日間、或いは四十九日間行なう物である。
13.亮山
水法を練る時にも使い、作法を行なう時にも使い、また山にいる時にも使って良く、左手……より右眼看我右眼流血までは相手の術士に対しの物である。
14.煥山
これは相手に対する物であり、太毒を含んでいる呪文であり、相手の山は高くて岩壁であるが、我の所は平坦なる場所で、相手の草は苦く、我の所は甘いと言う意味である。符は焼いて水の中にいれるか、剣訣で水の中に書き入れる。
15.炸鎗
これは鬪法に使う物で、相手の鉄砲をダメにする方法である。符を書いて置いた物を、念じ終わってから水の中に入れるか、相手の鉄砲に向かって呪文を念じながら符を書くのである。
16.架鎗一法
鉄砲をかつぐ時に唱えて符を香く。
17.封鎗閉子
相手の鉄砲や玉を封じるのであり、十八と同時に使う。
18.
19.化狗呪
犬に対して念ずるのであり、犬の呪文であり、かけるのが速くなる。
20.蔵身呪
先に蔵身をして、そして相手に対するするのであり、これは人に対しても通用する物であり、毒呪を相手に向かって放つ。
21.聴鎗封鎗
相手の鉄砲を封じる法であり、鉄砲の鳴ったその方向に面し、陰五雷の符を手のひらに瞥き、その方向に向かって呪文を念じる。次の二十二も同じ用法である。
22,23.開狗二法
以上すべて犬に対する呪文である。
24.開山呪
山の上で唱える物である。
◆解説◆
梅山狩猟術は主に山に入って狩猟するための術ではあるが、山では獣害があり、都会では人害がある物で、おかしな連中がいて害毒を流しているのであり、そんな連中に対処する法を梅山狩猟術全伝の中より選んだ物である。
<上集>蔵身呪一・二、黒殺、欒巴祖師、蔵身、鉄牛呪、黒殺呪、翻壇呪等の水法修練、観師。
<下集>請張五郎呪、弟子観請呪、9.瓦に朱書、黒殺呪、20.蔵身呪。
以前、「山怪」と言う本が異例のベストセラーになった。著者は三十年以上にわたって秋田のマタギ等各地の猟師を追い続けてきた人物であり、山に暮らす人々から取材した多彩な怪異譚が集められている。これにはまたマタギ奇談、山のミステリーなどの本が売られている。
山の怪異にしても霊どもにやられているのであり、法術を知らなければそれらに対応出来ない物であり、梅山狩猟術にしても自分とは関係ないと言ってはダメであり、山・地方には獣の獣害があり、都会では獣害がないがしかし人害があり、人間関係上に於いて悪い奴は必ず出て来る物であり、どちらも梅山狩猟術で霊害・獣害・人事に対応出来る物であります。
日本ではこのマタギの術というのはすでに途絶えて無くなっている。