玄胎結成秘詞(第一段)

年月日

 近来、願得玄胎微詞 (こは水位寿真によりて始めて題名せられしもの也)に紛らはしき名称の下に、よく此の一詞を以て玄胎を化作し得と称し密かに売法せるもの山口県下に有之由各方面より報告有之候へども、右は敢て今回にのみ限らず往年来宮地宗家の許諾なく濫りに水位師仙御遺稿を無断出版し、或は宗家一族たる北村家より借出せる寿真一部記録の残片中より擅に盗写し売法を事とし来れるものに有之、固より宗家に於て之に許可を与へたる事実なく、況んや水位師仙と何ら道統上の関連なきは言を俟たずして明白に御座候。

 斯の如き渡世者の系統に沈湎するに於ては、霊的に何ら道法結縁の成果なきのみならず不知不識の間に於て不純なる邪縁を結ぶものに 有之、此点斯道を奉ずる士の最も戒心を要する処に御座候。

 水位師仙伝法の付嘱漸く玄門の深秘を穿たんとしつつある折柄、愈よ師仙霊護の道流を清澄せずんば断じて正因の仙果を得べからず、併せて茲に当面逆抗の気流に対し所信を明かにし道士各位の御注意を喚起致しおく次第に御座候。

昭和二十四年二月

宮地神仙道宗家


第一次特別相伝第二類 玄胎結成秘詞(第一段)公開に就て

第一、護身秘辞(左官一男之方、宇言之章。右官一女之方、阿言之章。)

 こは専ら玄胎結成並に使魂法に用いらるる深秘の護身秘詞なり。玄胎凝結及び使魂法修行上最も戒慎すべきは魔性の障礙と陰神の発現とす。

 前者は外来のものに属し之等に対しては六甲秘祝九字真法、玄法攘魔秘文、三玄紫府剣運伝等によりて容易に撃攘し得べきも、後者は自身内より発する一の魔境に属し特殊の祓攘方法を必要とす。(陰神とは身内の陰気凝結して宛も玄胎の如くに出現し、また神仙の化現の如き形像を示現するなり。)

 本秘辞は専ら陰神の攘に用いらるるものにして師仙御体現の遺法たり、以て師仙用意の周到を憶うべきなり。

第二、拝天一真君霊文(天一真君ヲ拝スル霊文)

 道士感念を行ふの初、玄気を身体に浩大にせんが為に玄気の太祖に坐す太一真君を拝し尊みて感念神通変化の門を開き、而後に霊胎凝結の法を行ふ時は速かに其功を得べしとは師仙が霊凝結口伝に特記されたるところなり。

 此の霊文は原漢文にして本文七十字、総結辞八十一字より成る神真の秘辞にして玄胎成就を志す道士の必修霊文たり。
 之を誦し易からしむ為め師仙の訓読にしたがひ訳文を謹収せり。

第三、合天同体秘妙玄胎化作霊章(願得玄胎微詞)

 前章天一真君ヲ拝スル霊文に次いで修唱すべき祝文にして、玄胎結成に直接関連ある紫垣六霊君、日月陰陽君、二霊司命君、司録君に玄胎を得んことを願ふ仙伝祝文たり。

 措辞極めて幽遠「○ハ○○ヲ引キ○ハ○○ヲ迎フ」に章を起し「○○○○○○」に章を結ぶ本文百三十五字、総結辞三十四字(原漢文、訳文を謹収ス)より成る一大霊章たり。

 本章は一の祝文にして、直ちに本章の修唱によりて玄胎を化作し得るものに非ずと雖も能く合天同体の妙理を説き得て前霊文と共におさむべき必修課程に属す。

 因みに本章を願得玄胎微詞と名づけて遺記せられたるは実に師仙水位霊寿真其の人なり。

第四、五臓安寧真言

 霊胎凝結の初段階は先づ五臓を安鎮し之が精英の五気を凝結して之を幽化するにあり。
 本真言しんげんは五臓神の真神名を明かにし、五神五気に交る感念の妙処を霊示せり。

 此の霊唱を初発として玄門の神秘茲に闢かれむとす。

 以上を以て第一段とす。(相伝書には前述第一、護身秘辞より第四、五臓安寧真言に至る全四種の秘詞全部を収載す。)

五岳真形図と相伝書の結縁修法

 使魂法及玄胎凝結に五岳真形図施行法を併修して其功速かなるは古神仙の遺教にして先師の夙に説き給ひし処なり。
 而も世上流布するところの所謂五岳真形図なるもの二十余種の系統を数ふれど尽く偽図なり。

 師仙水位真人が霊真の仙位を得、其のしるしとして神授をうけたる五岳真形図により親修せられたる真軸一巻は春秋四十余年を雲霧の裡にかくれ、天運順環して漸く側近二、三の道士に拝観を許されしより未だ数旬に満たず。

 茲に記念すべき第一次特別相伝に際し、之が結縁の為め今次相伝書はすべて神気和凝にごもれる真形図に結縁修法の上、一々図気への感格を期したる後拝送頒授す。受くる者必ず心せらるべし。
(山口県下の某教に於て水位道統を偽称し、水位寿真神界将来の五岳真形図と称するものを掲げ遠感通神法なる儀式を行へる事実ある由なるも、右は似てもつかざる偽物なること水位師仙の威信の為め宗家の名に於て言明しおく次第なり。すべて惑はるるること勿れ。)