中岳真形図筆伝の特例に就て

年月日

神授霊宝混沌五岳真形
中岳真形図筆伝の特例に就て

ー 面授規定緩和のお答へ ー

拝啓 さきに印刷物を以て公示せる如く道士多年の待望たりし神仙道道場の開闢を見るに至りたる段洵に斯道の為御同慶に堪へぬ次第であります。殊に道場直授種目に於て、正真一系の道統の歴史的環境的伝承事実たる師仙神仙界将来の玄台諸霊宝の公開結縁が允さるるに至ったこと、殊別けて古今凡そ人界に生を享けたる求道士のうち地上果して幾人かが其仙縁と道福に浴しけん霊宝混沌五岳真形図の伝写に至りては、一万歳の仙果五千年の天機を全うすべき道士最高の道福として絶世の感激を以て迎へられた事は、爾来連日に亘る道士各位の御来書によっても之を窺ひ得るのでありますが、其大部分の方の切実なる御要請は、岳形相伝第三伝即ち道場特伝の五岳真形図伝写の面授規定の厳則を緩和して、嘗ての第一伝五帝真形図の如く筆伝による伝写が許されないであらうかといふ一点で、其理由として各自種々の個人的事由を挙げて居られますが、要するに
(一)勤務上若くは職業的環境上の事由により早急に土佐国の辺境に迄往来する予定を得難いこと
(二)道場来往等に要する経済上の事由、
(三)特に(二)の事由に関連して、若し筆伝が許されるならば土佐国往復の為に費さるる旅費を以てでも霊宝五岳真形図中の一図なりと伝写が可能となると考へられる。
(四)道場へ参加するに於ては是非特伝をも併せて受伝したいが一時にそれだけの余裕を産み出し難いので先決的に特伝の筆伝が許されれば先づ自宅に在りて特伝の伝写を受け時期を見て参山致したい。等の事由の各れかに要約する事ができる様であります。

 遠隔の地方道士各位としては尤も千万な御要請であり、本部としても夫々の御事情は一々諒解し得るものばかりでありまして、殊に其等御要請の文脈の裡に「誓約神文を以て水位先生を永遠の師仙と仰ぎ霊胎千万年の修真生活を盟約せる幽顕一貫の道士たる身分に鑑み其筆伝たると面授直伝たるとに依って道規遵守の向背あるべき筈はなく、若し誓約神文に背反するが如き所為あらば、師仙を欺き神明を無するの罪過は当然受伝者其人が受くべきであり、本部は此の点道士の人格道念を信頼されて特伝の面授規定を緩和されて然るべき事と考へられる」といふ惻々たる要請は深く斎主の胸を打つものがるのであります。

 天親地愛なる久参の道士各位、言別けて道統上の神祇師仙より其道念を試みられたものと解すべき今次の神仙道道場創建に協力の至誠を捧げられたる篤信の士に対しては、既に其道念を危惧さるべき何等の理由も存在し得ないものと解さるるを至当と判ぜられます事と、急速に緊迫する大動乱期に当面して予てより本部として篤信道骨の士に対し家国民人の霊的守護と其霊功を以て其身神仙に登るてふ霊威を有つ中岳真形図を烈々たる道念のもとに護持されたき念願の存するところより(道場開闢を急ぎたる霊的理由の一また茲に存す)現在道場参加資格を有せられる道士に対してのみ特伝(岳形相伝の第三伝)○○○神授霊宝五岳真形図のうち中岳真形図に限り特例を以て筆伝による伝写が許される事に裁定されました。

 即ち此の特例内規として
一、受伝資格は、道場参加資格者にして且つ仙階稟認証を有する者(道場参加資格あるも仙階稟認証を有せざる者は此際臨時稟申を行ふべきにつき同時に申請を行ふこと)
一、伝写の順位は一切親疎の別なく手続受理の順序の從ひ、本部より拝送の真形図副図(肉筆写本)を伝写の上、一ヶ月以内に書留郵便を以て御返送の事(此期間中特別の事情発生の為め延期の必要有る場合は速かに本部の諒解を求めらるべき事)
一、伝写幣帛料は道場参山伝写の場合と同じく金五千円也と定むるも特に御事情ある向は分納を認む。
一、玄門の正式誓約神文(受図祭文)は公表を憚るべき霊的理由あるにつき、取敢ず「今度深厚ノ道縁ヲ以テ神授霊宝混沌五岳真形中岳之図伝写ニ至リタル天機ヲ畏ミ茲ニ相伝幣帛料ヲ奉奠シ申請ニ及ビ候也」の文旨を以て御手続の事、右申請手続者に対し受図祭文書式を送付す。

中岳真形図解題

 先年呈上せる霊宝五岳真形図付嘱清規文中に説ける如く、凡そ岳形相伝(岳形とは五岳真形図の略称也)は之を分ちて五種目とし、其第一伝五岳五帝真形図は五岳に鎮り坐す五帝(五行神)の真形にして、原本霊宝混沌五岳真形図を受くる者先づ其前伝として必ず之を受くる也。
 第二伝混成一変五岳真図は即ち玄胎結成の過程に於ける五臓神の凝結五童化に用ひらるる真図也。
 第三伝こそは古来地上出遊の仙客の去来に応じて出没せし凡そ道書中の最尊最費四十年一伝とふ霊宝混沌五岳真形図即ち之にして、水位先生之を○○○に受けられたり、故に之を○○○神授と謂ふ也。仙籍(仙階)の至人に限り之を受く。
 即ち我水位神仙道に於ては神集岳直系道統の権限により道士中の道骨を撰別して仙階を稟認して以て之を受くるの天機を導引す。道統の任務は只だ夫れ此の機縁を導引するにあり、之を受けて茫々一万歳の仙果を全うすると否とは係りて其人の自由意志に存するものと謂ふべし。

 中岳真形図は、五岳の中央に位する真形図にして、申さば五岳真形図の神威を代表するものにして、之を地の神界に充つる時は宇内根本中央神府たる神集岳の位地と神能に相当するものと考へられて可なるべし。然れば老子も「家ニ中岳ノ図有ラバ人ト家トヲシテ患無カラシメ、天子ニ之レ有ラバ国安ク民豊カニ、道士ニ之レ有ラバ身、神仙ニ登ル」と申されたり。中岳ノ真形図を得て之を敬すること真ならば、中岳四岳を呼び、相引き、相応じて必ずや奇霊隠微の機縁を誘ひて全五真形図を得らるるの運びと相成るべきを茲に断言す。然れば道場に於ても先づ中岳の伝写を先決とせるなり。 以上

○万妖尽く発する群魔跳梁の折柄妖魔に魅入られたる不信の狂夫東西に出没して道業撹乱に狂奔す。相互慎密に戒心し本書状の内容等絶対他言無之様御約束相願ひ度。
○御手続は速達郵便に依らるるを便とす。書留同様の確実性ありて更に一両日到着を早からしむ。念の為め現金書留便とせらるるも可。

昭和三十六年三月二日
神仙道本部