峨嵋派符呪(1)

年月日

峨嵋派符呪の概要

1.總口訣の法
 この峨嵋派の符呪で最初に習うのは總口訣の法である。總口訣は又は請師訣とも称される。長期に修練の後に皮膚病、打ち身、打撲、子供の癇癪、夜泣き等の症状には少しもめば良くなるのであり、その効験は神奇であり、ゆえに摸摸もぉもぉ訣と名づけられる。 摸とは、なで、さするの意味である。
 總口訣の修練は吉日を選び、毎朝、目が開いた時にフトンの中で起床して歯をみがく前に、即ち黙念する事三遍、連続する事四十九日間を円満とする。とぎれる事があってはならない。四十九日以後は毎月一日、十五日に必ず行なう。すべての儀式・修法を行なう前に、これを行なうと良いであろう。
 これを行なうようになってやたらに夢を見る事が多くなるのであり、その夢の内容も筋が通っているのであり、雑夢の類いではない。起きた当初はその夢の内容ははっきりと覚えてはいるが、しかし寝返ったり起きたりするとすぐにその内容は忘れる物であり、時間がたつと完璧に忘れてしまう物である。

2.万病一碗水
 これは治病法である。符は男女に分かれている。まず請師呪を念じてから行なうのであり、符を書く時には三山訣でお碗を持ち、剣訣で符を書くか、或いは三本の線香で書いても良い。行なう順序としては念呪一遍してから符を水碗に書き、ポエで聖ポエが出るかをみるのであり、陽ポエでも良い。しかし陰ポエだけは使えない。もしも良くないのが出たら又同じ様に念呪して符を書く。そして又ポエで聞くのであり、これはお許しが出るまで行なうのである。そしてOKが出たら、法水を口に含みその患部に向かって霧のように吹き出すのであり、吹きだすと同時に右足は地面を打ち、そしてその患部に符を書く事一遍、合計これを繰り返して行なう事三遍、そして患者に法水を含ませる事三口、余った水があれば机の上に置き、事が終わってから清い所にまけば良い。これには遠くにいる人に対して行なう飛天水の法術がある。

3.浄天地呪
 この浄天地呪の作用は環境を浄化したり、不良なる気を清め除く物である。この唱えごとは単独に使用して一つの実用なる法術であり、霊や邪気の干渉、家宅不安等の状況に対して有効なる作用がある。
 お碗の中に白米と適当なるお茶を混合した物を用意し、左手に三山訣でお碗を持ち玄関前で立ち、これを各部屋にまいて行くのであるが、このまく時の作法にも口伝がある。

4.出路平安避鬼法
 家を出る前にまず呪文を唱えて、そして左手に符を書き、そして家を出れば、霊障害等を避ける事が出来る。

5.五雷呪訣
 これは陽五雷の修練である。一年に三回の雷を取るのであり、一つは春雷であり、そして雷が鳴ったとしてドカーンと地面に落ちた時の雷、そして冬至前後の雷であり、これはただ鳴った時で良く、この時は地面に落ちた物でなくても良い。この雷を取る時は家の外に立ち、手を前に出しそのままで呪文を唱える事三遍して雷が落ちる、鳴るのを待つのであり、落ち鳴ったとして手の先がすぐにジーンとなれば、すぐに手を握りしめるのであり、そうすればすぐに元気が全身にみなぎるのが実感出来るのである。これによって法力・道力を身につける事が出来るのである。三年連続して取れば大成と申す。これは三年で以後行なう必要がないという事ではない。ある時には何か気分がムカムカとする場合があり、その時は木又は水に向かって打ち放つ必要がある。木に打てばその木は枯れる事になる。

 この門派はこの陽五雷の力によって力を得る物であり、すべての霊符を書いたり呪文を唱えたり、すべての方面に応用が効くのである。そしてまた陰五雷があり、この力は目に見えない物、例えば円光術や夢の中でお告げを得る法、隠身術や霊眼等の一切の目には見えない物であり、陽五雷の場合は相手を打ち殺す事が出来るが、この陰五雷の場合は相手を病気にさせるだけである。修練の時には次の五雷符は必要とはしない。

陰五雷の修練

 この五雷掌は廟又はお寺にて行なう物であり、旧暦の十五日より二十一日の合計一週間、早朝の五時より七時まで東方に向かって行なう。お供え物は白米一碗、七百二十円のお金、タバコ一箱、キャンディ七十二粒、お酒二杯、くだもの、黄紙又は金紙。
 お供え物を神前又は仏前(祖先ではない)に供え、米碗に三本の線香をさして修法の前に符を書いて焼いて水にて呑む。東方に向かいそして中馬歩となって右手は剣訣の印を結び、五雷掌の呪文を一回唱え、左手の手のひらに五雷符を書き、そして内剄をこめて左手を前にユックリと打ち出す。以上これを繰り返す事四十分、そして立ってしばし休む事十五分して、今度は退敵法を行なう。この退敵法とは相手が勝手にしりぞくと言うようなそんなやわな法ではなく、相手をぶちのめす法である。これも又同じようにして行なう事四十分にして終わる。これにはまだそのほかに治病法があり、これは以上の修練を一週間行なえば出来る物であり、これ自体の修練と言うのは必要とはしない。これは五雷の治病の呪文に二種類の霊符とがある。

 五雷撃の修練を行ない、約五日位経ってから左手がものすごく熱くなる。焼けたような感じがあり、堪え難い感じがするが、これはそのまま修練して行けば良い。七日経てばこれは修練成功する物であり、実際に於いて使う場合には退敵法と治病法であり、退敵法は相手が近くにいる場合には五雷退敵の呪文を唱えて左手に退敵の符をかき、そして相手に当てる。相手が遠くの場合にも同じようにして使う。これに当てられた者は練功修練の時と同じように体、全身に高熱が出て、熱湯に入っていて体が焼かれる感じで、いくら治療しても熱は引かない。
 五雷治病はリウマチや関節炎等の治療に有効であり、五雷治病の呪文を唱えて左手に五雷治病の符を書き、そして患部を打つ事三回、またその手で患部をなでさすり、合計行なう事約十五分、一回で良くなる。
 次の符は五雷治病符の専門に精神病の者に使う符である。五雷治病の呪文を唱えてこの符を左手の手のひらに書き空撃したり、符を朱書して焼いて呑ませたりする。