霊宝五岳真形図
金文籍道士を簡抜し
霊宝五岳真形図付嘱
一、今のこの内規文を受くるの士は先づ同封の神仙道誌第四十九号(昭和三十年三月号)所載の「混沌五岳真形図説」を予め精読せらるべし。右は予め此書状に収むべき意図のもとに書かれたるものなれど、聊か長文に亘れるを以て便宜上神仙道誌に掲げ併せて後来の英霊漢の索引に資したるなり。
一、次で曩にお渡しせる北天神界紫蘭鳳宮真形図付嘱に関する内規文を取出して併読せらるべし。本状中に採りて適用すべき文旨多けれど、これ亦長文に亘るを以て総て之を省けり。即ち此内規文は右の二文を精読せられて然る後に読まるべきものとして之を誌せり。卒読して其意を失せらるること勿れ。
一、葛仙翁の五岳真形図法序にいふ「若し秘聖之書にして一人の口に杜秘せんには、即ち霊真の文まさに独見に墜ち、何に縁りてか後代に流存することを得むや。惟ふに伝授は但だ当に必ず其人を得べしと雖も、豈都てを蔽ふべけんや。秘して出さざるときは即ち此文永く翳れむ」と。先師御五十一年祭を卜して金文籍の道誌を揀択し、以て之を簡受するの意茲に存す。
一、之を要論するに、五岳真形図は地の造化の根本府たる五方五岳の神界と其各岳に鎮り坐す五行神の神機に霊通し、玄妙変化の根元に感通するの霊図にして、神仙道を一名「僊道」と謂ふが如く、人間より変化して神真へ僊るの道、即ち変化の妙道にして、人体を小宇宙といふ如くに人体も亦天地の変化の玄理に即して変化窮り止むことなきものなれば、得道登仙して霊威の得を具へ造化の神業をも分担すべき真人たるの道士に神縁熟して五岳真景図を賜はり以て霊真の璽信たらしめらるるは蓋し当然の順序なるべし。
道書に「人間に五岳真形あれば、一岳各々五神を遣して図書を衛護し、居る処の山川も常に侍官を遣して身の凶逆を防ぐ」と謂ひ又「此文有りて以て身に佩ぶれば即ち是れ衆神を彌綸し天地に横行す。家に在れば即ち神人奉衛し、山に入れば即ち群霊奉迎し、薬を採り芝草を服すれば即ち真仙営護し、疫に結び害に渉れば即ち妖災自ら滅す」等伝へたるは、変化の道を修めて真人たるべき道士に対し五岳真形図を通じて五神界の加護を垂れ給ふことの一端を謂へるものなり。
一、黄帝内真玄文にいふ「道士となるも真形を得ざれば則ち魂気定まらず三尸乱干せん。術士となるも此図文を得ざれば皆は成就せざらん」と。極言に似たれど五岳真形図の霊威の一面を洩らせるものとして矚目すべく、彼の抱朴子が「道書の重きものは三皇内文五岳真形図に過ぐるは莫し。古人僊官の至人此道を尊秘し、僊名有る者に非ずんば授く可らざるなり」と謂へると相応ずるものなり。玄門の士、夫れ此意を大悟すべし。
一、水位先生神僊霊感使魂法訣感根法の条に曰く「四岳の図を四方に安置し中岳の図を持ちて其中に居り鎮心瞑目して混沌の世天一神並に万物出生の始を感想す。良久しくして遂に混沌の形を見るに至る。而して元気の始を知り、亦人体の始を明かにし、神仙重んずる所の液霊水の法を察す。此に於て還液導引変化の理を覚り、而して玄妙の源に通ずるなり」と又曰く「夜半に至り五岳図を以て天井に張り偃臥空望して瞑目し唯だ混沌の始を思ふ、修行すること三月にして天一君に感す、夢中来りて不死之訣を授く。(中略)又半夜にして燈光を滅し鎮心して五岳神(五行神)を感想す。又た五元を思ひ瞑目して天井を望まば自然にして煙の如き者を見る。能く之を見れば人面の如く色は水に似たり。或は白く或は赤く或は黄に或は青なり。白色尤も吉なり。之を見れば忽ち祝すべし(中略)之を唱ふれは早速変じて五岳名山の形を成す。宮殿美麗にして、仙人往還す。其景色白日の如し。変化する事数度にして又水色を成す、其気を吸ふこと一年にして身軽く、二年にして老を卻けて若を成し、三年にして肌肉白く、四年にして元胎(玄胎)に帰し、五年にして不老不死に至る」と。
此真形図を用いること亦た玄胎結成の上法にして同時に使魂霊感の速法なる事を知る可し。又彼の霊胎凝結口伝文中感念力凝結の条に曰く「彼の神仙の秘書たる五岳真形図に至りては赤黒の二色混沌たる図にしあれば、真形の名目は如何なる故に負はせたるや、また黒赤は何たる事にやと年頃思ひたるを、不図心付きて感念の妙術に諸図の感想法を以て是を窺へば、赤きは烈火となりて炎上し、黒きは泥の如くして漂ふ、炎上の烈火上昇し畢りて一円の黒色と成り、漸々に水色と黒色に成れり、水色は多く黒色は少し、此に於て実の真形図たるを信ず。
然るに是より漸々に変化して終に日月星の元因迄も窺ひ得たり。是れ五岳真形図を持ちたる人の為に聊か云へり」と。宇宙造化の神秘を知る者は能く造化の玄妙を体得す。真に造化産霊の秘機に通ずる者に非ざれば以て神化の仙真たるを得ず。
人胎僊化の法も亦造化の玄妙に則り産霊の神力を藉るに非ざれば成就せず。これ実に僊道に造化の神道を学ぶを第一とする所以なり。人身変化の真元、天地の真胎の秘機に通ぜずして焉ぞ天地と倶に長久なる神仙の真胎を得べけんや。
授図種目
一、全伝を五段階に分ち、時節の展開を俟ちつつ相伝を了へたし。第一、二伝は筆伝とし第三伝以后は適宜参山の上直授面授とす
○第一伝 東方結気文、五岳五帝真形図(金文籍道士)
○第二伝 霊宝五岳真形図首題、混成一変五岳真形図(青童化図赤童化図黄童化図白童化図黒童化図)(金文籍道士)
○第三伝 ○○○神授霊宝混沌五岳真形図(紫書籍道士)
○第四伝 三皇内文、玄台霊宝混沌大五岳真形図(紫書籍)
○第五伝 五岳真形第二変図第三変図(紫書籍道士)
一、今回は右の第一伝とす。東方結気文に就ては神仙道誌第四十九号第三面第一段目に説きたれば爰には其解題を略す。五岳五帝真形図は五岳に鎮り坐す五帝(五行神)の真形図にして、方全霊寿真の秘記に「蓋し五岳真形図に二有り、一は五岳五帝真形図是れ也。一は所謂混沌五岳真形図是れ也。我が日域幸に此二真図を伝ふ」と云へる前者即ち是にして、五岳五帝(五行神)に感通し、元気の真精に感じ五気の化行を受け、五霊自ら凝結に至る五行攅簇の霊機を主どるものにして、岳形伝授の要伝を為し、其朱図のみは推古天皇十九年琳聖太子之を正一真人に承けて将来し来り我が日域なる玄道の士の間に流存するを得たるも其墨図に至りては実に水位先生によりて明治十八年秋之を神界より将来せられ爰に朱墨両図の完結をみたものなり。
昭和三十年三月二日水位先生御五十一年祭佳辰
神仙道本部
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